「あほんだら獅子」は千里中央公園南端、豊中市立千里体育館裏、丘の上にあります。1970年、千里の数か所にニュウ ウン完成記念のモニュメントが企業などから寄贈されましたが、これはその一つです。製作者は巨石を用いた創作で国際的に著名な、流 政之(ながれ まさゆき)氏(1923年、長崎生まれ)で1970年、大和銀行(現リソナ)寄贈となっています。
直径1.8m、高さ0,8m程の石組の円柱(首)の上に長さ4.75mの石頭がのっていて、重量は140 トンだそうです。千里は大阪から鬼門にあたるので、厄除けとして置かれたとも言われます。作られてから40年あまり、この獅子は頑固に西を向いて、千里の人の厄を払いのけ、いたずら者による傷もなく、あの阪神大震災でもびくとも動きませんでした。この「あほんだら獅子」の弟分にあたる同じ流氏の代表作、ニューヨーク貿易センタービルの「雲の砦」(1975年、250トン)は、あのテロによるビルの崩壊の跡から原型をとどめて発見され話題となりました。
東町に永く暮した高齢者の方はこの「あほんだら獅子」の顔を見て、古い付き合いのなつかしさを感ずることと思います。この顔は正面から見て左の一部が奥にずれていて見方によっては夫婦、見方によってはひとりものに見えるような仕掛けになっているそうです。そのように見るには西の方から距離をおいて見る必要があり、体育館の屋根によじ登らなくてはならないでしょう。
インターネットで「あほんだら獅子」を検索すると、千里中央公園のこれだけが紹介されます。つまりこの石像は「あほんだら獅子」として唯一無二のものです。この項目には60件あまりの書き込みがあり、検索は6万回を超えています。書き込みの中に、「有名なので行ってみたら、ひと気のない寂しい丘の上にひっそりとあって驚いた」などというのがありました。1980年頃までは、中央公園に入ると、丘の上の「あほんだら獅子」が眼に入りました。この獅子の上によじ登ろうと挑戦して、果たせなかった子供時代を過ごした人も多いと思います。
(文・高野光男 写真・栁原一之)